こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

わたしに会うまでの168キロ

UTMF 2018 168k D+8100m 45時間で完走。
本当に完走したのかな?全部夢だったんじゃないかな?
朝起きるとそんな風に思いますが、とんでもないゾウ足を見て「いや、夢じゃない!」とニンマリする日々。

何からどうやって書き出していけばいいのやら。
いつもならすぐにレポを書き始められるのになかなかまとまりません。
やっぱり時系列に書いていくのがいいのかな。

その前にまず最初に最大のピンチについて書いておこう。
杓子山を超えて残り20キロを切り、完走が見えてきた頃。トレイルから林道に出たところに仮設トイレが一基ありました。とりあえず入っておくかと軽い気持ちでin。
出ようとしたら、建てつけが悪く鍵が開かない・・・・
どうやっても開かない・・・ いや、ちょっ、ちょっと待って
コース脇のトイレだけど道から微妙に離れているし、すでにランナーはかなりばらけていた。
このくっさいトイレに閉じ込められたまま制限時間を迎えるのか?
なんというトラップ・・・
だっ、誰か!!!とガタガタ必死でカギをいじっていたら開きました。ほっ。

2014年のSTYで90キロ23時間弱、2016年のビブラム香港で100k24時間半、これがこれまでの最長。
だから今回はたとえ完走できなくても100キロは超えたいなと思っていた。こんだけ練習を積み重ねてきたんだしA7きらら128kまでは這ってでも行くぞと心に誓っていた。
関門時間に間に合っているうちはその先に進むつもりだった。
なのにその決意はいとも簡単に崩れる。しかも前半に・・・。(早すぎて自分でもビックリ)
100マイルだから前半ゆっくりで後半に足を残す、なんとなくそんな風に考えていたのだけど違った。
途中からはいくつものショートレースを順にこなしていく感じ。わずかな休憩時間に回復させ、それで次まで進む。何度も死んでその度に生き返るみたいな。(一体何回死んだか)
ポイントは回復力。結局、仮眠らしい仮眠はとらないまま45時間だったのだけど、A4精進湖民宿村77kで5分、A5勝山94kで10分床に転がったら次のエイドまでは行けるかな?と気分が変わったのがすごかった。
座って休むんじゃなくて寝っ転がる。多分、脳にまで血流をよくすることでそれまで「やめれ、やめれ」と信号を出し続けてたのがストップするのではないかと。
強い思いや根性論だけではどうにもならない身体の摂理というか人体の不思議に向き合う45時間でもあった。

今回はサポートなしだったのだけど各所でラン仲間や知り合いがボランティアスタッフをしていたのでとにかくそのエイドまでは行く!という気持ちで進み、そこでリセットしてまたその次へ・・・と進み続けたがどんなサポートよりも迎えてくれる仲間の笑顔が支えになりました。
A2麓、A7きらら、A8二十曲峠、A9富士吉田。
エイドに到着すると本当に喜んでくれた。それが嬉しくて。やっぱりみんなをがっかりさせたくなかった。
自分にもがっかりしたくなかった。
一緒に喜びたかった。

リタイアと完走は紙一重
ちょっとしたことでリタイアに傾く。大きく傾く。
大きく傾けばもう戻せない。
これまで毎晩トレーニングしてたバランスディスクの上の片足立ちのように。

なんとかバランス崩さずに最後までいけたからfinishできた。
どうしようもない自分と向き合う45時間。究極の弱虫、なんという甘えん坊、誰の役にも立たず・・・悲しいほどに。
でも夜明けの鳥のさえずりや、早春の小さな花、高山植物、そしていろんなところからいろんな富士山。
やっぱり山が好き。
夜が来て、朝が来て、夜が来て、また朝が来た。
それが全部つながっててすごい体験だった。

他のレースと違って、もう一度これを走ろうという気にはまだなりません。普通は一晩寝ると辛さを忘れてまたやろうって思うのだけど。
でも、みんなにはこれを体験して欲しい!と思った。
新コースに変わったUTMF。あの鬼のような前半の厳しい関門時間はなくなりました。完走率も70%以上あったみたいだし、誰でも頑張ればゴールまで行ける可能性のある大会になりました。
もちろん、ちゃんと練習してちゃんと準備しないとだめだけど。
わたしが完走したってことで多くの人に希望をあたえられたとしたら嬉しいです。
この大会に出て夜の富士山のかっこよさをぜひ見てみてください。
夜富士の写真は一枚も撮らなかったけれど、深く深く心に残りました。
さぁ、STYがスタート。この3時間後にUTMFがスタートです!
つづく。