こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

書物を愛する人

先日、『チャリング・クロス街84番地』を読んだ。サブタイトルに『書物を愛する人のための本』とある。
1949年10月5日からある手紙のやりとりが始まる。
それはアメリカに住む女性へレーン・ハンフからイギリスの古書店マークス社に宛てた手紙が最初だった。欲しい書籍のリストを同封し、どの本でも結構ですから汚れていない古書の在庫をお送りくださいませんでしょうか?という内容のもの。そこから20年以上にも渡って古書店とヘレーンの文通が続く。この本は小説というよりは往復書簡集である。
でもこの手紙の文面が良いのです。丁寧で美しい言葉、時にはユーモアを交えて、そしてお互いの思いやり。会ったことのない者同士だけど生まれる心のつながり。
今みたいにアマゾンでポチッとしたら翌日には新品の本が届いてしまうようなあっけなさとは程遠い世界です。手紙の中で送ってもらった本の美しさを散々、賞賛したのち、"追伸−『ピープスの日記』在庫があります?冬の夜長に読みたいのです"と最後に書いてあったりするのがたまらない。
ヘレーン曰く、古書の良いのは以前の所有者が頻繁に開いていたページが自然と開くこと。手紙の中でこんな風にも書いている。
『私は見返しに献辞が書かれていたり、余白に書き込みがあるの大好き。だれかほかの人がはぐったページをめくったり、ずっと昔になくなった方に注意を促されてそのくだりを読んだりすると、愛書家同士の心の交流が感じられてとても楽しいのです。』

この本を読んだら古本屋さんをのぞいてみたくなった。
そしたらタイミング良くお友達が古書店街近くのギャラリーで展覧会を開催中とのことでいそいそと出掛けてきました。
お茶の水湯島聖堂前にある美蔦堂さん。きれいなギャラリーでした。製本関係のワークショップも多数やられているそう。
活版活字と古版木と版画の世界が満載の展覧会。ひとつひとつの線が繊細で美しいと思いました。それは活版だから?
エンボスのポストカードがとても気に入りました。早速これで便りを出したいと思います。

ツバメ活版堂展覧会
6月14日(日)まで開催中です。美蔦堂さんの言葉、ひそやかに、本好きな皆様が集結すべき展示であります。全くその通りです。
11時〜19時(土日〜18時)です。どうぞお出掛け下さい。


映画化もされてますヨ!