こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

ロン・ミュエック展

湘南より暑い金沢から帰ってきました。
度肝を抜かれたロン・ミュエック展についてのご報告です。
ロン・ミュエックは1958年、オーストラリア、メルボルン生まれ。映画やテレビ番組用の模型作りの経歴をもつ彼は古典的な彫塑の手法(粘土で作った形を型取りする)でシリコンやファイバーグラスを用い作品を作っている。その作品はまだ全部で35体しかない。34体は人物像で1体だけが犬の像である。彼の名が知られるようになったのは亡くなった自分の父親の遺体を表現した作品なのだという。
その作品の精巧さとともにセンセーショナルだったのは実物とは異なるそのサイズであった。父の像は実物よりかなり小さなものだったのだ。
以後、発表される作品の数々はどれも観る人がどぎまぎしてしまうようなサイズの大きさや小ささなのであった。
今回、金沢で展示されたのは最新作『ガール』を含む7点。誰もが一番最初の展示室に入った途端に度肝を抜かれることとなる。第一展示室には『マスク�U』、男性の巨大な顔面が横たわっているのだ。そしてそれはこれまでみたこともないようなリアルさなのである。髪の毛やひげの一本一本もまさに本物のようであるが何よりその肌の質感が見事。血管の浮き出る感じもまるで生きているようだった。美術作品というと硬質な乾いたものがこれまでわたしが観てきた大半であるが彼の作品はなんというかウェットな感じ。思わず作品に接近してしまう。作品にはもちろん手を触れることはできないが作品のまわりをぐるりと見て回れるようになっているので360度の鑑賞ができる。ガラスケースなどにも入っていないので観る人はかなり生身の作品に触れる(実際は手を触れられないのだが作品の息づかいは感じられるのだ)ことができるのも良かった。このパンフレットの寄り添う男女は小さいサイズの作品でわたしたちは二人を取り囲むようにのぞき込むことになり、妙にドキドキしてしまう。
わたしは『イン・ベッド』という作品が好き。巨大な女性がベッドの上でくつろいでいる。その少しぼんやりした視線と自分の視線があう場所に立ってみるとやはりドキッとしてしまった。

とにかく難解な美術展とは全く異なるので誰にでも楽しめる展覧会だと思う。普段美術館に足を運ばない人にもぜひお勧めしたいな。
ということで夏休み帰省する予定の同郷の皆さま、8月31日までなのでぜひお出掛け下さい。


上から観ても下から観ても楽しい不思議なプールもぜひ!