装釘(大久保明子)も装画(杉山巧)もとても良くて見返しの布目の赤い紙も鮮やかな美しい本。
祖母と二人暮らしをしていた未來。仕事の契約が終了し明日から無職になるという日に祖母が階段から落ちて骨折。
入院した祖母を元気づけようと祖母の生家を探す旅に出る。行き先は台湾の古都、台南。七日間の旅の間に知った台湾の歴史、そこで出会った人々・・・
未來にとって初めての台湾を案内してくれることになった「かすみちゃん(洪春霞)」のキャラが良い。実は彼女の日本語は日本のキャバクラで働いていたときに覚えたものなのでちょっと荒っぽい。(でもそこがいい)
たった1週間の旅の記録の割に、現地で訪ねた母娘の身の上話など重すぎてその部分がえらい長くて読んでいてしんどくもなるけれど「かすみちゃん」で救われ読み進められる。
わたしも未來とともにおばあちゃんの記憶の中の六月の雪を探す旅をしている気分だった。未來と同様に台湾の歴史についてはほとんど何も知らなかった。日本の植民地だった50年間のあとの戒厳令の敷かれた38年があったことなど。
実はうちの祖母も台湾、高雄生まれである。結婚生活は台南で、母は嘉義で生まれた。
なので未來が自分と重なることも多々あり、未來の祖母、朋子さんの言葉もうちの祖母の思い出と重なり、夢中で読んだ。
ハッピーエンドでもなく、しかも中盤はひたすら重いのだが。
祖母が80歳のときに記した手記によると終戦後、基隆港から引き揚げ船に乗り、和歌山の田辺港に入港したのは昭和21年3月14日。
思い出の常夏の島、三十年間の生まれ故郷を捨て見ず知らずの日本へとあります。
いつかわたしも未來のように祖母の生まれ故郷を訪ねる旅がしたいなと思いながらはや何年だろう?
そろそろ実現したいです。