A6忍野113Kから再びライトオン
二晩目の始まりです。最初はフラットの道で走れそうなんだけど走らず。いや走れず。月がきれいだった。
林道の登りが長く続く。前後に人はいなくて単調に登る。どこをどう歩いているのかわからない。たまに後ろから人がやってきて抜かして行く。自分が誰かを抜くことはないので相当足取りが重くなっているのは確か。眠い・・・
気がつくと大平山。ここでも夜富士。ここからの稜線は忍野のレースや探鳥会で何度か通ったことがある。昼間で元気なら景色のいい楽しい道。だけどこのときはフラフラの道。やっかいな階段を登ったり下ったり。途中で女性が「クマが出たとメールが来た」と言う。大会本部から一斉送信できららから富士吉田の間で熊が目撃されたと情報が来たのだった。あいにく熊鈴は持ってきていなかった。一抹の不安。
この頃のわたしの心情は現状ではとても完走できそうになく、というか何回リベンジしても完走は無理!と思い始めていた。やっぱりわたしにはこんなことは無理だったのだ。絶妙のタイミングで熊出没なんてやめるきっかけでしかないとさえ思った。
どうする?きららでやめる??
そんな自問を繰り返しながら石割山。とここで聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
マキさんと再び合流。
山中湖までの下りを引っ張ってもらう。下りなのに全然走れなくて前を行くマキさんが時々振り返ってくれているのがわかった。「マキさんは今、元気?」と尋ねたら「うん、復活した!」とのこと。
そうか・・・元気なんだ・・・
わたしは走れなくなってる。眠い。行ける気がしない。など弱音を吐いた。おまけにゲロも吐く(ツバしかでなかったが)。
それでもやめるとは言い出せなくてその後の相談。
熊鈴は二人とも持っていないから二人でワァワァ言いながらいくしかないよね?
予定より遅れていてあまり時間がない。でも20分くらいは仮眠したいよね?
じゃ、それぞれ20分くらいで補給と準備して20分仮眠して午後11時に出発しよう。
商談成立。
A7きらら128Kでボラしていたラン友さんにも仮眠して11時に出発すると伝える。
ここでお味噌汁をもらう。きれいなトイレに入る。水補給。オレンジやバナナを食べる。あっという間に時間が過ぎていく。仮眠室に入ったらすでにマキさんが寝ていた。タイマーをセットし、わたしも横になる。
午後11時。眠れたのかどうかは定かではない。だけど行こう!という気持ちになっていた。
きららから先の新コースは試走しているのでわかっていた。ダメなら戻ってくるまでだ。
マキさんより先に出発。ラン友さんが見送ってくれた。そのときに撮ってもらったわたしの写真はひきつった笑顔
六花さんメディカル(屈伸)チェックを受ける。でもその前に目薬。屈伸ができるかどうかじゃなくて、目に力があるかどうかを見られるのだときいたことがあった。なので目薬を注す。
この先は険しい山のエリアですぐには救助に向かえない場所である。自信がなければこの先に進まないでください。途中でダメだと思ったらここに戻ること。
ちゃんと仮眠は取れていますか?
ちゃんと食べられていますか?
とひとりずつ念を押される。
それにしっかりうなづいた。仮眠した。ちゃんと食べられている。大丈夫
『明日河口湖で会いましょう』とタッチして出発。屈伸のチェックなんてやだなぁと思っていたけれどこれはこれで気合いが入った。
明神山への登りは急登だけど危険な場所はないし、トレイルの幅が広いので自分のペースで登ればいい。ゆっくりゆっくり登った。山頂からは山中湖と夜富士。2015年梅雨明けの夜、ここから富士登山者のライトを見たこともあったっけ。その先は走りやすいトレイルが続く。バイケイソウは試走のときより大きくなっていた。大好きなブナの林が続いている。
あれっ?わたし走れてる??
覚醒した??
不思議なことにもう眠気もなく、足の痛みもどこにもなく、元気に走れていた。
眠気覚ましに持ってきていたコーヒージェルを補給(北海道のお友達がくれた)
おいしい!!!
それまでは半袖アームウォーマーにペラペラシェルだったけど防寒ロングスリーブに着替えていた。時折の冷たい風にも体感温度はちょうど良くそんなことにも気をよくしていた。
こうなればもう怖いものもなく、覚醒したままA8二十曲峠141Kへの1キロの下りも爆走とも言える勢いで。
二十曲峠ではMMA渋井さんや蚊取り線香塾でご一緒した方に会う。残り27K、この時間なら大丈夫とのこと。
ここでも持ってきたフリーズドライの味噌汁を作って飲む。そのときにスペシャルゲストの石川弘樹さんからは今ここで食べられているから絶対大丈夫ですよ、と太鼓判を押してもらう。嬉しい。
なぜだかはわからないけれど数時間前までの状況を脱し、覚醒しており、その覚醒は朝まで続いたのだった。
遠いと思っていた杓子山は案外近くて、険しい登りに差し掛かる手前で夜が明け始め、それと同時に鳥のさえずりのコーラスが始まった。コガラ、ヒガラ、ツツドリ、アオバト、クロツグミ他、数え切れないくらいの鳥たちの声が順に重なる。ああ、きららでやめなくて良かった。
ついに杓子山山頂!残り20キロ!!!!
南アルプスもきれいに見えた。素晴らしい景色。
杓子山からの下りは大変だった。途中でトイレトラップもあり(あぶねぇ)
午前8時前、最後のエイドA9富士吉田155Kにin吉田のうどんが超おいしい!
スタートから41時間が経過。
つづく。