こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

田島征三展

遠方より遊びに来てくれた友人を誘って平塚美術館で開催中の田島征三展へ行く。

タイミングよくギャラリートークの時間帯に入館することができた。ギャラリートークって講演会みたいなものなのかなぁと思っていたら少し違っていて、田島征三さんご本人がマイクを持って展示室の中を作品を解説しながら一緒にまわってくれるというなんともぜいたくな企画だった。約30分の夢のようなツアーである。まずは初期のころの作品について。「ちからたろう」などなつかしい絵本の原画の数々。ダイナミックな構図に力強いタッチ。絵本が好評に売れたことに対してご本人はおもしろくなかったと話す。『認められるとなんだか不安になった』というのは少しわかる気がした。で、「やぎのしずか」を自ら絶版にしたのち5年間、絵本を出版しなかったのだという。その後がらりと画風を変えたり、難しい印刷技術を使って誰にもわからない方法で絵本(『くさむら』)をつくったりする。自分の中のものをどんどん壊しながらどんどん前へ突き進むという感じがヒシヒシと伝わって来た。最後の展示室では木の実を使った作品がある。木の実の気持ちになってつくるのだと言う。「皆さんも写真に撮られるとき左から撮ってくれとか、あるでしょう?」そんな風に木の実も横にしてくれとか縦に置いてくれとかそれぞれの希望を語りかけてくるのだとか。深いなぁ・・・。

でもこれは靴つくりにもあてはまる。革との対話をしながらつくる。伸びたくないって言っていた革が「参りました」と言っていうことをきいてくれる瞬間あるよね<靴つくり仲間の皆さん!
それにつくり手としては認められたいと思う反面、わかってたまるか!という気持ちもある。
だけど売れないと職業としては経済的に厳しくなるわけで・・・と田島征三さんの絵本が売れない話はおもしろかった。
ミュージアムショップでは絵本がたくさん売られていて買うと田島さんがサインをしてくれる。「最後はかぼちゃをつけてたたき売るかぁ」なんて冗談おっしゃってるきさくな作家さんでした。ステキ。

8月31日までです。小中学生は無料。ギャラリートークも好評につき次の土日にも開催されるようです。