こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

新人ちゃんの頃

今読んでいるのは柴崎友香さんの「フルタイムライフ」という小説。美術系の大学を卒業し、思いがけず包装機器会社の事務職についた女の子のストーリー。一応、恋愛ものらしい。
目次をみると5月、6月、7月・・・2月と見出しがあるので彼女の10ヶ月を綴ったものらしい。わたしはまだ5月の項を読み終えただけである。

新入社員喜多川春子22歳に与えられた仕事は古い書類をシュレッターにかけること。大量の書類を延々細かくする作業だ。だけど一度にたくさんの紙は入れられない。ホッチキスの針なんかははずさないとダメだ。横を通り過ぎてゆくセンパイ社員は「適当に休憩しながらやりなよ」とかいうのんびりした会社。会社帰りに会った美大時代の友人には『おもろいで。会社。ほんまにコピーしたりお茶いれたりするねん。』なぁんて言っている。←関西弁ってやっぱいいですね

この最初のシュレッターのシーンを読んだだけで、自分の新入社員だった頃がぐわぁ〜とよみがえった。懐かしい。
企画デザインで採用されたものの、最初は営業研修から始まったわたしの会社員生活。といっても営業をやるわけではなくとにかく雑用。っていうか何したらいいかなんて全然わからなくて先輩社員に言われたことをやるだけだった。そんな入社して間もないある日、「これファックスしておいて」と伝票の束を渡された。取引先ごとにかなりの量の伝票があり、それを先方にファックス送信しておけと命じられたのだ。いざ始めてみるととにかく枚数が多いので時間がかかる。ファックスの前でじーっと伝票が飲み込まれてゆくのを見守るわたし。A社の次はB社という具合にファックスナンバーを調べては送信し続けていた。そう、何時間も。優しい先輩は「座ってやれば」と椅子を持ってきてくれたりもした。まさに「フルタイムライフ」のシュレッター係の春子と同じ状況。こんなんで給料ってもらえるんだなぁなんて考えたりもした。

しかし、こんなのんびりぼんやりした状況も一本の電話によって打ち砕かれた。取引先からの電話で「ウチのじゃない伝票が流れてきてるよー」ということが発覚。わたしってば、取引先を間違えて送信してしまっていたのだ。取引先同士の関係はいろいろとしがらみがあるようで社内でも取引先の名前は符牒を使って呼ぶようにとか細心の注意を払うように言われていたのに・・・。「何やってんだー」と怒鳴られたのは言うまでもない。
とにかくどんくさい新人ちゃん22歳でした。

そんなフレッシュだった自分のことを思い出せる一冊だと思います。


春分の日はおしごと。なんか寒い一日。
コルクは接着剤乾くの遅いです。