こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

南の島に雪が降る

先日、ほぼ日の「あのひとの本棚」というコンテンツで柴田理恵さんがおすすめしていたので興味を持って読んでみたのが『南の島に雪が降る』 という本。皆さまにもぜひおすすめしたい本。


著者の加東大介さんは沢村貞子さんの実弟長門裕之さんらの叔父にあたる人で俳優。楽屋で着付けにかかっているときに召集を知る。それが昭和18年の10月8日のこと。10日には入隊で長旅ののちニューギニアのマノクワリに配属される。軍隊の中にはもと演芸家が何人かおり、それらの寄せ集めで演芸分隊を作ることになる。何の娯楽もない希望の全くない中、兵士の士気を高め、皆のストレスを和らげるための演劇だった。

しかし、兵士からは予想以上に熱狂される。そこで、やるなら本格的にやろうと衣装やカツラ、大道具なども前職の経験を生かした人たちが精一杯工夫をして見事な舞台を作り上げてゆく。こちらの部隊、あちらの部隊と連日慰問に訪れ劇団員は無休で演じ続ける。中でも女形の人気は絶大である。
着物も工夫をして作り上げ、お化粧も天花粉をつかってそれらしく装う。皆、日本に残してきた母や妻のことを重ねるのだった。舞台に障子を置き、長火鉢をしつらえると皆、日本を思い出す。マノクワリには純白の白という色はないのだ。四季もなく一年中梅雨のようなのである。そんなところでお先真っ暗な状態の中での唯一の娯楽であった。
舞台に雪を積もらせ降らせようと、頭をひねり、パラシュートの生地を床に敷き詰めそれらしくして、紙吹雪の雪を散らせたところ観客の兵士は皆、沈黙して涙を流した。東北出身の部隊だったのだ。もう決して見ることはできないと思っていた雪をみて故郷を思う。←読みながら号泣です。



戦争を題材にしたストーリーは悲し過ぎて苦手なのだがこの小説は悲惨な状況ながらもなにかにすがって生きる力というものを伝えてくれる。著者の実体験をもとに綴っているのだから圧倒的なリアリティである。わたしは祖父のことを思い浮かべながら読んだ。これはみな、本当にあった話なのだから。あとがきにあったのだがこの作品が発表されてからニューギニアで戦死された人の肉親から加東氏に届いた手紙にジャングルの中で病気や食べ物に苦しみながら死んだと思うと可哀相でならなかったがこの体験記を読んで芝居を観て楽しんだひと時があったと思えてホッとしたという内容があったという。

ぜひ皆さんもこの本を手に取ってあとがきまでも読んでいただきたいなと思います。

ちなみに二度映画化されているそう。一度目は加東氏が主演。二度目は95年に原作に少しエピソードをつけて脚色したそうだ。機会があれば観てみたいな。


わたしは図書館でこの本を借りたのだが、この本は昭和36年刊行の古いものでおまけに加東氏の直筆サインまで入っているものだった。(よく見たら36年9月10日の初版本!)きっともうこれは絶版ですよね。しかも装幀は谷内六郎さん!

古本屋さんで探したらみつかるかしら。


ところでこの本の後半部分はお風呂の中で読みました。自宅ではじめて半身浴というものに挑戦。これまでも「ぬるめにゆっくりつかる」ということはしたことありましたが手は湯につけず、肩に乾いたタオル、38度の湯にみぞおちまでという正式なのははじめて。20分を過ぎると汗がちゃんとでてきました。
なるほど、確かにポカポカになります。雪のシーンで泣きながら半身浴でした。

とりあえず体に良さそうなことは何でも試したいお年頃・・・。

ゆっくりですが、進めています。
まだまだ修正中。