こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

カマクラノ日々

霧で煙ってるような湿度の高いお天気の中、kikaさんに出来上がったサンダルをお届けに行く。ついでにたくさん寄り道した一日。
メインは鎌倉文学館
『澁澤龍彦カマクラノ日々』という企画展を観に行く。先日の横須賀美術館の次回の展示がこの澁澤龍彦ということもあり、澁澤作品には馴染みのないこびとくは下調べをかねて出掛けたのであった。恥ずかしながら澁澤龍彦さんについては何にも知らなかったのである。こびとくが大好きなポール・ギャリコ作品の翻訳者、矢川澄子さんが元・奥さんだった(のちに離婚)ということも今日初めて知った。展示は直筆原稿や愛用品、著名人との手紙など味わいのあるものばかり。澁澤龍彦氏は昭和3年生まれということだからそんなに古い時代の人ではないのだが、やはり原稿は3Bの鉛筆で原稿用紙に手書きされたものだった。修正しているブルーのインクはおそらく万年筆のもので、こういうのを見るとワープロ原稿の現代の作家さんたちは一体何を残すのだろうかと思ってしまう。やっぱりわたしも「クツクツ」は手書きを貫こうと思う。

澁澤氏は北鎌倉の円覚寺近くにお住まいだった。展示品の中に1987年の4月の卓上カレンダーがあった。それに書き込まれたメモの中に『風呂でトラツグミ、聞く』という一文をみつけた。4月6日のことである。この年の5月にガンが再発し入院、7月に再手術が失敗し8月に亡くなった澁澤氏。夫人のエッセイによると澁澤氏はトラツグミホトトギス、ウグイス、ヒグラシなどの初音を聞いた日を記していたのだという。この4月6日は家でトラツグミを聞いた最後の日だったらしい。

すぐにでも北鎌倉、円覚寺周辺にトラツグミを探しに行きたくなってしまった。

文学館のバラ園の夏のバラはもう盛りは過ぎている感じ。
あじさいもさすがにそろそろおしまい。
次は八幡さまのハスの出番です。
もうすぐ咲きそう。やっぱり鎌倉の彷徨い歩きは楽しい。
文学館からはそのまま歩いて極楽寺方面へ。新しくなった三留商店を冷やかしたり、今年はほとんどあじさいの咲いていない成就院をのぞいたり、個人宅での陶展にお邪魔したり・・・。
近場をウロウロしているだけだけどこれはこれで貴重なトリップなのです。