ちょうど四年前、オオジシギの渡りについてとても驚いたので記事にしました。
2016年の調査で北海道の勇払原野から太平洋にまっすぐに飛び出して、どこにも寄らずにパプアニューギニアまで5800キロをノンストップで6日間で渡った1羽のオオジシギ。
以来、わたしの中ではオオジシギはヒーローです。
2016年の調査についてはこちらで詳しく↓
そして2020年、再びオオジシギの渡りの追跡調査がありました。
2回目の調査がなぜ2016年から4年もかかったのかというと、取り付ける送信機を5gから2gにするための開発を待っていたから。少しでもオオジシギの負担を軽くするためにメーカー側の開発を辛抱強く待っていたそうです。
2020年7月20日、5羽のオオジシギに送信機を装着し放鳥。
5羽のうち追跡できたのは2羽。
しばらくは移動せず近隣で過ごしていた様子。
うち1羽(A)が8/8に盛岡県雫石に移動。
8/18 福島県会津若松市に移動。猪苗代湖の近くに1ヶ月ほど滞在。
9/21 さいたま市荒川河川敷に移動。
そしてついに9/29に太平洋上に!!
(あれ?北海道から一直線に海に飛び出してないじゃん・・・陸地を転々としてた)
もう1羽(B)は9/5に八丈島付近でした。このまま海上を一直線に渡っていくのかと思いきや、
9/7にはなんと佐渡島へ。(北上してる!?)
そして9/8には北海道に戻るという意味不明の行動に。
この頃、台風の接近があったようでその影響なのかと考えられるようですが、このあと北海道内を一周するかのように移動するB。
その後、Aとほぼ同時期の9/30に太平洋上にいることがわかりました。
うん、AもBもこれから一直線だね!と思ったのも束の間、Aは10/2に足摺岬沖に・・・(またもや北上!?)
文章だけだとわかりづらいので絵にしてみました(地図が簡易的すぎてすみません)
青線がAの軌跡、赤線がBです。
10/2以降は送信機からの通信が途絶えてしまったそうで、結局この2羽の行方はわからずじまい。
無事にオーストラリアまで行けていることを祈るのみです。
そんなオオジシギたちがもうじき渡ってきます。
昨年の6月、勇払原野で足輪をつけた個体が確認できたそうです。その足輪は2016年に勇払で取り付けられたものであることがわかり、北海道とオーストラリアを4往復していることが判明しました。
どんなルートであれ、確実に彼らはとてつもない距離を渡ってきているのは事実。
父の蔵書を整理していたときに捨てられなくて実家からピックアップしてきた『アニマ(昭和60年11月号)』の中にもオオジシギの渡りについてのコラムがありました。
これが書かれた昭和60年当時はまだGPSを使った調査はされていませんでしたが、アジア北部とオーストラリアとのシギ、チドリ類の渡りコースはふつうフィリピンを経て弧を描く線とされているけれど、オオジシギについてはそれとは違い、日本の関東地方とオーストラリアを結ぶ直線コースなのではないかと予測されていました。その理由として、フィリピンで観察記録がないこと、マニラの博物館にも標本が全くないこと、さらにオーストラリアでオオジシギが記録されているのは東部海岸だけで北西部には全く記録がないこと、しかも日本においても西日本を通過している証拠がないということがあげられています。
ふむふむ。高度な調査機器などがなくとも予想はできるということですね。
みんなの観察記録が集まれば渡りのコースが見えてくる。なんかバードウォッチングのモチベが上がります。
オオジシギは神奈川県でも観察することはできるようであるし、もし出会うことができるならとてもとても感激すると思うけれど、見ることがなくてもいいやとも思う。
見ることはできなくとも、その渡りのルートを想像したり、密かに応援するだけで充分楽しい。
渡りの追跡調査は今年も行われるはず。見守っていきたい。