こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

羊と鋼の森

久しぶりにいい小説と出会ったのでそれについて書きます。
宮下奈都さんの『羊と鋼の森』
帯には”村上春樹のドライさと湿り気。小川洋子の明るさと不穏。二人の先行作家の魅力を併せ持った作品”とあった。確かにそういう印象もあり。
美しい文章が綴られている。静かに。

いいなぁと思う文章をメモしながら読む習性があるこびとくですが、最近はそういうこともしなくなり・・。
でもこの小説はメモった

美しいと言葉に置き換えることでいつでも取り出すことができるようになる。人に示したり交換したりすることもできるようになる。美しい箱はいつも身体の中にあり僕はただその蓋を開ければいい。

木の名前を知っている外村くんに先輩、柳さんが言った言葉。
なるべく具体的なものの名前を知っていて細部を思い浮かべることができるというのは案外重要なことなんだ

板鳥さんの目指す調律を表している原民喜の一節。
書くとネタバレになるから書きませんが。

外村くんが高校生のときに学校の体育館で出会ったピアノの調律師板鳥さん。
出会った直後に板鳥さんに弟子入りを希望する外村くん。
調律師の学校を卒業し、板鳥さんの勤める楽器店に就職する。先輩柳さんについて修行しながら自分の目指す調律をみつけていく外村くんの成長する姿を温かく描いた長編小説です。
6月に映画が公開されるのだけど、この小説の澄んだ美しい世界をどうやって映像で表現するのか・・・
キャストを見たけど、悪くはないが良くもない。
もちろん映画は観に行くつもりですがあまり期待しない方がいいかも。もしくは観ない方がいいのか?
ともかく小説の方はオススメです。

わたしは調律に対する向き合い方など自分の仕事に重ねました。
とにかくお客さんに合わせて丁寧にする仕事。コツコツコツコツ。ホームランは狙わず。
ピアノにどんな音を求めるかは好みの問題。
この好みの問題の部分でなるべく具体的なものの名前を知っていて細部を思い浮かべることができるということが案外重要だということ。想像力もだいじ。
あきらめないこと。
一歩ずつ、一足ずつ確かめながら近づいていく、その道のりを大事に進むから足跡が残る。いつか迷って戻ったときに足跡が目印になる。
靴つくりに近道はないといつも思っていたけれど、この小説を読んでみんな同じなんだなぁと思った。
そしてそれはランニングも同じ。
だから魅了されるのだ。
目指すものがないと辿り着けないのも同じ。

先日、一緒にUTMFを目指して練習した仲間がアトリエkikaさんまで走って来てくれました。
わたしもランウェアで合流。
そのあと4人で一緒にトレイルとロードをつないで海まで。
ソフトクリームで乾杯しました。
空も海も青くて、いつも通っているコースだけどみんなと一緒だとひとりのときと全然違ってて楽しくて。
目指すものがあってそこへ辿り着いたからこそのこの瞬間だと思うとチャレンジしてよかったなぁと心の底から思いました。
レース中でさえ、もう一生辿り着けないと思っていたのにです。
100マイルで人生が変わるとは思わないけど、やる前とあとでは違いはある。

もうUTMFの話はしないつもりがまたしちゃいました

さて、昨日の雨もあがって日曜までは雨もないようです。
今日は所用がありkikaには行けませんが金土日は行きます!
夏の帽子とサンダルにぜひ会いに来てください。


アトリエkikaさんのインスタグラムより。