こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

かりんとう侍

中島要『かりんとう侍』読了。
ペリー来航、安政地震があった幕末が舞台。
旗本の次男坊、雄征はお酒は飲まず、甘党。高級な和菓子よりかりんとうが好き。「ささや」のかりんとうを心より愛している。
優柔不断で押しが弱く、いいところといえば二枚目なとこだけ・・・
芸者の鶴次の情夫になっている。

もちろん武士らしい一面もあるのだけど刀は腰に差していても人を斬ったことはない。
仕事もなくてフラフラただようのみ。できることとしたら婿養子に行くことぐらい・・・

武士であっても一家の後継ぎでなければこんな感じだったんですね〜
なんとなくゆる〜い時代小説です。
そんな雄征を好ましく思えるのは素直で身分の分け隔てなく頭を下げられるから。こういうお侍さんもいたのでしょうか。
そんなあまちゃんの雄征ですが、まあ、いろいろあって刀を捨てて家を出る。何が自分にできるのかと考えた末・・・あとは読んでのお楽しみ。

『男はすべて女より生まれた子供のなれの果てでしょう。ならば、何より女子供を大事にすべきではありませんか』という雄征の言葉。『男がただ前だけを向いて突き進んでいけるのは、いつだって影で支えてくれる女たちがいるからだ。そして子供がいなければこの世の中は続かない』とも。
鶴次をはじめ、登場する気丈なおかみさんたち、この小説がドラマ化されたならどんな女優さんを配役しますかねぇと想像します。(尾野真千子さんは絶対でてきそう)そして雄征役は・・・?

ちなみに筆者の中島要氏は女性だそう。なるほど確かに女性目線の時代小説でした。
安政地震が起こる第5章より以前はどれも短編集のようなのに第5章だけ違ってて、それが全体のまとまりの悪さを少し感じさせますが、こんな雨の週末にさらっと読むにはちょうどいい読後感のよい小説でした。