こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

言の葉の庭

『言の葉の庭』を観て来ました。
全くのノーマークの映画だったのですがお客様に「靴職人になりたい高校生がでてくるんですよ」と教えていただき俄然興味が!
予告編の中にはしっかり釣り込みのシーンもありました。これは観なくては!と出かけたのでした。

家庭の事情からか15歳にしては大人びた高校生タカオ。彼の夢は靴職人。雨の日は一限をサボって新宿御苑のベンチでつくりたい靴のスケッチをしています。そこで出会った年上の女性ユキノさん。実は彼女はタカオの学校の古文の教師だったので下世話な言い方をすれば"禁断の恋物語"ってとこなんですが、わたしにとってはそこのところのストーリーはどうでもよくって、とにかく靴つくり!!
足型を取るシーンや木型を削るシーンもあります。カッターで裁断したり、釣り込み、釘を打つシーン。
どこかの職人さんのところでかなり取材されたんでしょうね。リアルに再現されていました。
ユキノさんがタカオにプレゼントする本もでてきます。
そう、あの本です。靴職人を志す誰もが心ときめかす本。こびとく工房の書棚にもあります。

雨のシーンが多くて、緑や雨だれがとにかくとてもきれいです。これだけでも一見の価値がある。
梅雨明け前に観たかったな。
タカオの「靴をつくることだけが俺を違う世界に連れていってくれる」というセリフがズシンときました。
監督インタビューの中に『創作というのは単に自分の頭のなかに浮かんで来たものを形にしたいというだけではなくて、人に見て欲しい、自分を知って欲しいという想いが根っこにあるから行われる』とあってそれにも共感。

クツクツ通信の本をつくったとき(2002年)にあとがきにわたしも書きました。靴をつくることを通じて、ひととつながっていきたいと。そんなことを思い出しながら映画の世界にどっぷり浸っていたのでした。
この映画の存在を教えてくださった方とも靴をつくっていなかったら出会えなかった。
すっかり靴つくりの話題から遠ざかっている「こびとく日誌」ですがそれでもわたしの毎日は靴をつくることから決して離れることはないのでした。
たとえ今は世界の中心がゆっきんさんだったとしても。

変なオチになったけどおすすめの映画です。ぜひ。同業の方もぜひ。
同時上映の短編とあわせても1時間ほど。
2時間たっぷりのものもいいけれど、こんな風に短い時間で観られるものもいいなぁと思いました。