こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

とにかく散歩いたしましょう

小川洋子さんのエッセイ集『とにかく散歩いたしましょう』を読む。
毎日新聞に月に一度掲載されていたものをまとめたもの。彼女のエッセイを読むのは初めてだった。
小説を読む限り、勝手にクールで落ち着いた才女をイメージしていたがそのイメージはいい意味で覆された。
案外、小心者の一面もあり、勘違いのおっちょこちょい、小さな頃から変なことをじーっと考えていたりはわたしにも心当たりありで一気に親近感を覚えた。
なんといっても『ハダカデバネズミ』の話がおもしろい。
東アフリカに生息するハダカで出っ歯のネズミ。姿かたちもさることながら女王さま一匹に仕える80〜最大300匹にもなる群れの秩序ある生活に小川さんは感心させられる。女王さまと交尾できるオスは1〜3匹、残りは外敵が侵入したとき、真っ先に食べられる兵隊と雑用をこなす働きバチ、じゃなくて働きデバ。
女王さまに赤ちゃんが生まれたとき、働きデバは床に寝そべって肉布団になる。
小川流に言うとまさに階級社会の底辺にあって、新しい命を守るため、身を捧げる肉布団係たち・・・
女王様の深い孤独を思うと、特別なひとりになるよりもその他大勢の肉布団係の方が気楽でいいかもしれないと考える小川氏。熾烈な競争やややこしい駆け引きよりも、出世が望めなくてもたっぷり眠れる方を選ぶと。
そしてささやかな希望としてどうせなら赤ちゃんに直接触れられる位置がいいなぁ・・と考える。
肉布団係にだって自分なりのやりがいを求める自由くらいはあるだろうと。

行き詰まった小説の途中でこんなことをあれこれ夢想し、そして再び小説に戻る、そんな小川氏の日常の日々が楽しい。

昨日は節分。歳の数の豆ってオソロシイ・・・