こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

天のしずく

ドキュメンタリー映画『天のしずく』辰巳芳子"いのちのスープ"を観る。
スープ、おつゆのもの。
それがこれほどまでのものとは。

終末期医療に携わる人にむけて開いたスープ教室のシーン。
もう何も口にすることができなくなった人でもスープなら飲める。
玄米と昆布としいたけのスープ。
素材について語る患者さんたちの笑顔。

涙がとまりませんでした。

一年前、入院した祖母は病院の食事を拒否し続けました。
いわゆるミキサー食と呼ばれる食事。
スプーンで口元に運んでもひとなめしてあとはもう口を結んだまま。
結局、点滴の管でつながれることになりました。
実家に帰省したときにわたしが料理したものはいつも何でも「おいしいねぇ」とひとつ残らず平らげてくれていた祖母。わたしの料理をこんな風に100%おいしいって言ってくれるのは世界中で祖母だけでした。
この映画を一年早く観ていれば・・・
祖母にもう一度「おいしいねぇ」って言ってもらいたかった。
それができなかった後悔、もっと何かできたのではないかという思いは一年経った今でも1ミリも消えることはありません。

映画の中で病に冒された友人に何かできることはないかと考えていたときに、たまたまテレビで辰巳さんのスープに出会い、友人のためにスープをつくって送り届け続けたという女性と辰巳さんが手紙を通じて知り合い出会うシーンがあります。この歳まで生きてきたからこそわかることがある、80歳をすぎて気付くことがある、と話していたのがとても心に残りました。

いのちについて考えるとき、「食」はとても大切なものです。
この映画をどうぞ観てください。

辰巳メモ。
玉ねぎなど野菜を炒めるときは火にかける前の冷たいお鍋に切った野菜とオイルを入れてよく混ぜてなじませながら炒めること。
野菜が喜ぶようなヘラ使いをしなくちゃいけない。
辰巳さんが子供の頃、いろんな人にお風呂に入れてもらったが、体を洗ってもらうときお母様は必ず右から左というように子供ながらに次にどこを洗ってもらえるか自然に予測できるような洗い方をしてくれた言う。ひとによってはこっちの次にあっちと不規則な洗い方のときもあったとのこと。野菜もおんなじ。次にどういう動きをされるか予測できるようなそういうヘラ使いをするように・・・。
これは靴つくりにも言えることと思いました。

追記・12月2日、14時30分〜 北鎌倉浄智寺で「天のしずく」上映会と辰巳芳子氏のミニトークがあるそうです。
詳細はコチラ→
さらに追記・ほぼ日でのインタビュー記事もぜひ→