こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

トランヴェール

新幹線の座席にセットされている小冊子『トランヴェール』。12月は青森のりんご、11月は信州の鳥の特集で毎月新幹線を利用していたから車内で楽しませてもらった。
しかし、1月号は下田特集だったし以前訪れたことのある蔦温泉も掲載されていたので持ち帰ってきた。(ご自由にお持ち帰りくださいと書いてあります)なかなか内容豊富で読み応えがある。巻頭に毎月駅弁の紹介があるのもいい。
角田光代さんのエッセイも毎月掲載されているのだが、この1月号を読んでハッとした。
『色あせない時間』というタイトルで修善寺の先にある温泉へグループで行ったときの話が書かれている。
毎年のように関東近辺に行くというメンバーは70代の元文壇バーマダムを筆頭に、60代、50代と各世代がいて40代の角田さんが最年少。この温泉地へいこうと言い出したのは70代のマダムで40年程前によく泊まりに来ていたのだとのこと。そのころの常宿に連絡してみると3年前に閉業してしまっていた。やむなく近所の他の宿に泊まる事にするが、閉業しても建物は同じ場所にあるらしいからと一行は連れ立ってその宿に向かう。
そこで御年93歳の元女将さんと再会する70代の元文壇バーマダム。
手を取り合ってなつかしいわねぇ、みんなでよく酔っぱらって踊ったわねぇ、たのしかったわねぇと言い合う。二人がそうやって話すのを見ていると見ていないその光景がありありと浮かんだという角田さん。
そして帰り道に車窓を眺めながら考える。
あと三十年後、四十年後に自分もあのようにかつて過ごしたよき時間を巡る旅ができるだろうかと・・。
多くのものが時間とともに変化しても、瞬時に時間を飛び越えて元女将さんとマダムのようにすばらしき日々をまったく変わらないかたちで取り戻しに行けるのか・・・。

そうするには、今、よき時間、すばらしき日々を送らねばならないのである。
こう結ばれてました。
今、この時間をたいせつに。きょうもえがおで。

おまけ。
今回の帰省の移動中に読んだ本。往き『森崎書店の日々』、帰り『レインツリーの国』。どちらも終点に着く頃にきっちり読了。つるつる読めて帰省の旅のお供に最適でした。ひとり旅って移動中にいっぱい読めるから好きです。