こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

ハセツネ完走レポ・その3

第二関門での休憩は20分ほど。
一応、トイレにも入ってみたがすっきりせず・・。次のトイレは御前山避難小屋かもしくはきれいめ大ダワの泡トイレ。
なんとかなるさ〜。
Y子さんたちに別れを告げ、ひとり出発。(どうせ追いつかれるに決まってるのだから先に出ないと)

42キロを超え、ここからが未体験ゾーン。あと30キロもある。
最初の幅の広い急下りは全く走れず・・・。こういうところを駆け下りれるようにならないとタイムは速くはならない。
登りの遅いのは仕方ないにしてもほんとに下りがネックとなってしまっている。
登りってそんなに差がつかないようで、急な登りになると前を行くランナーが数多く見える。
だけど下りになるとどんどん先行され、ひとり取り残されるような状況になる。

前後に誰もいない暗闇を進んでいるとまたお腹が・・・。
ラソン大会で立ち○○は失格だけど、ハセツネってトイレ以外でっていうのはルール違反だったっけなぁ?と考える。
ちょっと脇にそれて草むらで・・とも考えたがあとから来る人にライトで照らされたらおしまいだ・・・
みんなライトは明るいの使ってるもんなぁ・・・と脇の茂みに視線を移すとわたしの125ルーメンのヘッドライトはかなり遠くまで照らしてくれていた。こりゃ、無理だ。

その頃に月が出ていることに気付き、空を見上げたら満天の星。
わぁ〜と思わず声が出た。いつも見ているのは点にしか見えない星だけど、ここのは丸だった。ひとつひとつの星が大きいのだ。そしてスーッと星が流れた。
『完走!完走!完走!』と三回唱える時間はなかったけど、とにかく関門に戻ってリタイヤはもうなしだ。
このときまでに3人くらい、トボトボと逆方向に戻ってゆくランナーを見た。最初は落とし物でもしたのかなと思ったが、何かを探している風ではなく、そうだ、関門まで戻ってリタイアするつもりの人なんだということに気付いた。第二関門なら自力下山ではなくバスで運んでもらえるから・・・・。(すでに昨年経験済み)
時間はあと10時間近くあるのだから、とにかく焦らず進もうと自分に言い聞かせる。戻るのはナシだ。
しかし、そんな固い決意もものの数分で揺らぐほどきつい登りが延々と続くのが御前山。
やはり山頂が近づいてくると風がピューピュー吹いて来る。(この頃の装いはこんな感じ)
午前4時50分。山頂ではベンチがあり、それほど寒くなかったので座ってしばし、休憩。水場をスタッフに尋ねている人がいた。避難小屋の脇にあることを説明している。ああ、そういえばトイレ・・・。
避難小屋はコースから少しはずれたところにあるので大ダワまで我慢することにする。半分、もうどうでもよくなっていたが。
レース後、日にちが経ってくるとキツかった思い出がどんどん薄れてくる。代わりに思い出すのは楽しかったことばかり。だからこの御前山あたりの記憶が実にあいまいだ。このあたりが一番キツかったのだとは思うのだけど。

午後11時くらいにヘッドライトの電池交換をしていたのでまだ大丈夫かなと思ったが、御前山以降の下りが不安だったので山頂ベンチで二度目の電池交換。ケチケチせず、ライトはパワー全開で行きましょ。せっかく電池は三回分もってきたのだし。
そして苦手の下りに入る。途中からしらじらと夜が明けてくるのがわかった。鳥の鳴き声も聞こえ始める。
山の中で夜明かしなんて人生初の体験。最初は早く夜が明けて欲しいと思っていたのにこの頃にはもっと闇を楽しんでいたいという気持ちが強くなっていた。不思議なものである。
大ダワについたときは完全に明るくなっていた。ここはきれいな泡トイレがある!!
でもドアを開けて覗いてみたら、完全に詰まってしまっていた。ダメだ・・・終わってる・・・。(ペーパーも終わってました)2000人以上が一斉に山に入るハセツネ。トイレの処理能力のキャパを超えてる人数ってどうなんだろう?
雨あがりの柔らかいトレイルをたくさんの人が通り、しかもストックで突っつき・・・。すごく荒らしてしまってない??

大ダワが約50キロ地点。あとは大岳山さえクリアーすればもうきついところはない。大岳山は直下の岩場登りが大変だけどそれまでは割と走れる場所が続く。一瞬の我慢で行けるはず。やはり試走をしていたのは心強かった。気分的にずいぶんラクだった。
そして問題のロッククライミング部分。↑試走のとき、えーんとなってたとこ
登りに入る前に、ストックは畳んでザックに装着。ここは両手を使って登らないと無理なのでストックを持ったままでは大変なのだ。しかも下るときも急なので面倒でもストックは仕舞った方がいいと試走のときに考えた。だけどまわりの人は誰もしまっていないのが不思議だった。男性ばっかりだったからなのかな。両手を使っても登るのに難儀するような段差もあり、足の短いわたしにはかなりの難所だった。試走のときは元気だったからそこそこ登れたがこれまで50キロも歩いてきた足にはかなりきつかった。それまでひとり旅だらけだったのに、ここだけぐちゃぐちゃの渋滞だった。ようやく登り切って大岳山山頂。
朝のすばらしい山々の眺め。富士山も見えた。
山の稜線がくっきりと見え、雲海も。絶景でありました。これまで通過した山頂はすべて闇の中だったのではじめての眺望にうっとり。ちょっと長居してしまった。
「間に合いますかね〜」の問いにスタッフの方が「大丈夫ですよ!たぶん」と答えていた。
えっ、"たぶん"なんだ。絶対じゃないのね・・・と焦って下山開始。下りも岩イワで渋滞。足が下につかない高さなのでどうやって降りればいいか悩む・・。最後はロープにつかまってズルズルと・・・。どんなことがあっても他の人の助けを借りると失格になるので、このような場所で女子が立ち往生していても当然ながら手助けする男子はいない。難所を降り切ると男の人たちはガンガン先に行ってしまった。この先は走れるコースなのだ。わたしもそのつもりで、もうストックは仕舞ったまま、行こうと思ってた。だけど、ストックがないとふらつきがあるようで、背負ってるとやっぱり重いのでもう一度セットすることにし、ベンチで休憩。その間にたくさんの人が通り過ぎる。ちなみに、この大岳山荘のあたりは臭いでわかりますが、トイレあり。さすがに寄ってる人はいなかったな。皆さん、あとはゴールまで突っ走るのでしょう。
わたしも寄らずに先を進む。
夜も明けたし、もうつらいところはないし、あとは時間との戦いのみ。第三関門閉鎖は午前10時。ただし、10時の通過だとゴールの制限時間が危ういのでそれより前に通過することを目標にヨロヨロと走り出しました。
大丈夫、走れる足は残ってる!!!

長くてすみません。今回で終わらせるつもりが終わらなかった・・
つづきは次回。