こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

渡りの足跡


冬にぴったりの一冊を読み始めた。
梨木香歩さんの『渡りの足跡』。帯に"渡り鳥の足跡を辿り、観察し、記録することから始まった、待望の最新エッセイ"とあるとおり、鳥の観察シーンがいっぱい登場するエッセイ。バードウォッチャー必読の書です。
梨木さんの小説には動植物の名前が頻繁に登場するけど、それは小説を書くために資料を集めたというよりは、彼女がそれらの観察が好きでもともと知識として積み上げられたものがあるのだろうなぁと感じていたのだが、このエッセイを読むと特に鳥見については好まれていたのだろうということが容易にわかる。

ミヤマカケスの一群がやってくる。
普通のカケスより一回り程小さく目も黒目がちで優しく、カケスほどアグレッシブではない

とか
トドマツの枝にはウソの夫婦。頭部の半分、目の下部分までが黒色、雄はローズピンクの喉元、それがグレーの地に映えておしゃれだ
など、野鳥図鑑の解説の味もそっけもない文章をそのままそっくり梨木さんの言葉に変えて欲しいと熱望するくらいです。
薄いブルーグレイの体に細い一筆ですっと書いたような過眼線がシックだ。体つきも他のカラ類よりスマート。
さて、この鳥は何でしょう? 答えは次回に・・・。

ヒヨドリの渡りについての項で、わたしもずっと疑問に思っていたことに触れられていた。
『移動しない個体群と、移動する個体群。
その土地で逞しく生き抜ける個体と、遠い遠方に旅立つことをプランに入れて生活する個体』
ヒヨドリは移動するものと、その土地に留まっているものの両方があります。

ときどき自分が鳥だったら、どっちを選ぶのだろうと意味の無いことを真剣に考えたりする。
梨木さんのエッセイによれば、冬場、キャベツなどの葉物類に食害をおよぼすのは渡りのヒヨドリだとのこと。実のなる木はすでに土着の(移動しない)ヒヨドリの縄張りで彼らには手が出せず、仕方なく葉物野菜に手を出したのだろうと。
ならば、渡って行った先でも自分の縄張りが持てないということになる。それならわざわざ渡る必要があるのだろうか?
縄張りだけの問題なら地元で葉物野菜をついばんでいた方がリスクも少なくて済むのではなかろうか・・と梨木さん。

それでもわたしが鳥だったら渡る気がします・・・・。
何でだろう・・・・。

梨木ファンじゃなくてもおすすめの一冊。文中に登場する鳥の解説もあるので鳥に詳しくなくても楽しめると思います。

ちょっとニガテのオシブチ貼り。指先の感覚で貼ります。今日は仕上げますよ〜!!