こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

渋くてちょっとイイ話

表紙の湖畔の温泉宿からの絵が良くて手に取った内海隆一郎著『湖畔亭』
温泉地を旅人のように転々としながら、短い間、そこで湯番として働く男性が主人公のショートストーリー。
湯番というのは温泉の温度を調節する人のこと。通常、源泉は高温なのでそれに水を足して適温にする。その適温というのもその日の気温によっても変わり、1度といわず、5分違うだけでも人はぬるい、熱いを感じるという。そのくらい微妙で繊細な仕事。
温泉好きなので、楽しく読んだ。アマゾンではまだレビューが一件もなくてそんなに注目されている作家さんではないのかもしれないけどなかなかどうして・・・であった。


で、二冊目を読む。
これも装画が良くて、矢吹申彦さんの飲み屋横町みたいなイラストが使われている。表紙に描かれている「浮舟寿司」「みっちゃん」「ジョン」「グリルカワサキ」・・・などそれぞれのお店別にストーリーが展開される。どれもはじまりは終戦直後の新橋の焼け跡からというのが共通点。よって店主はどの店も70代にさしかかっている。それぞれのこだわりを持って店を切り回している。みんな職人さんでそれが良い。ちょっと枯れたいぶし銀とでも言いましょうか・・・。
そんな感じが心地よく読める。
天ぷら屋さんの"油のつぶやき"を聴くというシーンでは、昔よく通った乃木坂の天ぷら「ふそう」のおじさんのことを思い出した。おまかせで揚げてもらい、最後は天茶漬け。そのお店ではわたしは「はすちゃん」と呼ばれ、いつも頼んでいないはずの蓮根がいつの間にかお皿に盛られていてにっこり。わたしが大の蓮根の天ぷら好きと知ってからのおじさんの粋なサービスだった。ほんとに泣けるほどなつかしい。
そんなことも思い出させてくれたこの「鰻の寝床」。おすすめの一冊です。

次はミステリーだという「波多町 」を読む予定。こちらは長編のよう。





さて、異常なまでに取り坪の悪い紙型。
なるべく無駄なく取れるよう悪戦苦闘。
今週はサンダルも出来上がる予定です。