こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

湘南の鳥 今昔物語

昨日、藤沢探鳥クラブの創立30周年記念行事として開催された講演会を聴きに行った。
講演は、高麗山探鳥会(こまたん)の方による『アオバトの不思議』と浜口哲一氏による『湘南の鳥 今、昔』というふたつの題目。どちらも大変ためになる講演だった。
アオバトについては長くなりそうなのでまた後日。
で、湘南の鳥について忘れないうちにここに記します。

浜口氏が探鳥を始めたのが1960年代後半だったそうでそれから40年の間の湘南で見られる鳥の変遷についてのお話。40年の間に増えた鳥もいれば減った鳥もいる。
単純に数が増えた鳥というとカワウ、カラス、アオサギがあげられる。90年代頃から増えてきたらしい。
また分布を拡大した鳥としてはハクセキレイを挙げられていた。1930年代には北海道でしか繁殖してなかったのが時代とともにどんどん南下しており、現在は名古屋あたりまで繁殖しているのがみられるとか。近所でよく見られる身近な鳥がそんな風に地域限定だったとは知らなかったので驚きだった。他にはイワツバメも80年以降相模川、酒匂川、引地川沿いに分布を広げているらしい。ビルやコンクリートの橋桁など人工物に巣をつくる鳥は分布が広がっている様子なのである。また外来種の増加も目立つ。ガビチョウに関しては1990年代後半から5年くらいで劇的に増加。ものすごい勢いで増えている。もともとは日本にいなかった鳥で飼われていたものが逃げ出して繁殖したというから外来種のたくましさは目を見張るものがある。植物だってそうですよね。

一方、減った鳥としては干潟が減ったことで湿地の鳥がめっきり減ってしまったとのこと。ヒクイナ、タマシギを例にあげられていた。どちらもわたしは見たことがない。あと夏鳥が減ってしまったとのこと。夏鳥の多くは東南アジアで越冬し、夏日本で繁殖するが日本での環境がいくら良くても越冬地の東南アジアの環境が良くなければその数は減ってしまうのである。世界をまたにかける渡り鳥は越冬地、繁殖地、そして渡り途中の中継地のどれが欠けても生きては行けない。どの環境も悪化しないことが生き残りの条件なんだなぁと思う。
自然のことを語るときはいつも『温暖化』のことばかりがでてきてしまうけど本当はもっともっと身近な環境のことが重要なのだ。例えば、モザイク状ではあるけど林は比較的残されている。だけど田んぼや草原は宅地に変わってしまっている。すると林の鳥は減ってはいないが草原の鳥は激減してしまう。猛禽類の盛衰は顕著で小鳥などを食べるオオタカは数が増えている。それはゴルフ場など見通しの良いところがあれば獲物をみつけられるからで、サシバなどヘビやカエルを主食とする猛禽類谷戸が減ったことで採食が困難になり激減しているという。また川を取り巻く環境はさほど変化していないのにカワウやアオサギが増えているのは農薬の使用が減ったからなのではないかという。
川の護岸工事が進んで洪水が起きなくなったことから河原に植物が生えるようになり、小石ごろごろのところで営巣するコアジサシには受難の時代になったとも。
こちらを立てればあちらが立たず・・・というようにバランスって難しい。
他にもいろんな例をあげてわかりやすく説明してくださったが全部は紹介しきれないのでこのくらいにしておきます。

藤沢探鳥クラブでは月例で川名緑地の探鳥をずっと続けておられるそうで、昔の写真なども展示されていて興味深かった。珍鳥を追い求めるのではなく地に足をつけてという感じで地元を大切になさっているのが感じられた。わたしもそんな風なバードウォッチングをしてゆきたいなーと思った。

こびとく日誌はもはや靴つくりからかなり遠ざかってゆきつつありますが、鳥なんか全然興味ないよーって方にもちょっとだけきいてもらえたらと思ってバードウォッチング関連の記事を積み上げて行きます。気にしてくれる人が増えてくれると嬉しいです。

会場で浜口氏の新刊を手に入れました
楽しいビーチコーミングのハンドブックです