こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

絵描きの植田さん

寒い冬の日にふさわしい本を『雪沼』に続きもう一冊。
いしいしんじ著・植田真・絵『絵描きの植田さん』。
主人公植田さんはガスストーブの不完全燃焼事故で聴力と大切な人を失ってしまう。三ヶ月後、都会から遠く離れた高原の一軒家に画材一式とわずかな着替えをたずさえ引っ越す。人物の絵を描くことはやめ、野鳥や動植物の絵だけを描く毎日。湖に張った氷のような植田さんの心は少女メリや村の人との交流によって少しずつ融けだしてゆく。

この本の挿絵を描いたのが「植田」さんなのでもしかして実話?と思ったのだけどそうではないらしい。植田真さんの挿絵(文章に沿った挿絵というよりはイラストレーションと呼んだ方がいいかな)は後ろの方のページに見開きで幾ページにも渡って挿入されている。
アトリ、エナガシジュウカラ。オオマシコ、キレンジャクマヒワ、ベニマシコ。ルリビタキコゲラ・・・。そしてユキフデ、たちつぼすみれ、ゆきのした。本文中に出てくる野鳥の名前や植物の名前はわたしの心に滲みるのだ。単なる小鳥や野に咲く花が名前を持った途端に色づき始めるのはなぜなのだろう。挿絵の中にウソをみつけたら、自分が冬の森で初めてウソに出会った日を思い出した。一面の銀世界の中で赤く輝いていたウソの喉。(ウソという鳥はノドの部分の毛が紅色なんです)そのとき確か絵描きの友人と一緒だった。

あっという間に読み切ってしまう短いお話だけどもしこの本が気に入ったとしたら、きっとアナタはバードウォッチャーになる素質ありです。

さて、今週から本格始動!の方は多いと思います。
もちろん、こびとくも。なのにちょっと風邪気味。
でもがんばります。