こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

賢者の贈り物

クリスマスが来ると思い出すことがある。
それは「賢者の贈り物」のお話にまつわる思い出。
「賢者の贈り物」とはO・ヘンリーの有名な短編小説。ご存知の方も多いと思うけど貧しい夫婦がお互いに贈ったクリスマスプレゼントのお話。妻は夫のために自分の自慢の髪を売って彼の懐中時計のための鎖を買った。夫は自分の大切な懐中時計を売って、妻に似合う髪飾りを買った。そんなお話である。
すごくお互いを想ったステキな贈り物のストーリー。もう役に立たないものを贈りあってしまったけれどより深く二人の心は結ばれる。

で、このお話にまつわる思い出とはわたしの高校時代にさかのぼる。
よくある話であるが中学までは難なく授業についてゆけたのに高校に入学した途端に授業についてゆけなくなったわたし。授業中は寝てばかりいた。したがってテストでは赤点。学期末には焦って教科の先生に泣きついて課題を出してもらいそれを消化することでなんとか及第点をもらったりしていた。そんな高1の2学期末、担任でもあった英語教師に職員室に呼び出された。きっと成績のことで何かお目玉をくらうのだろうと覚悟をして先生のもとを訪ねた。そんなわたしの意に反して先生は一冊の薄っぺらな本を差し出してきた。それが英語版のOヘンリーの「賢者の贈り物」だった。そして『冬休みにこれを読みなさい』と言った。それだけだった。感想文を書けとかレポート提出しろなどということは一切言わなかった。ただ読めとだけ言われて渡された簡単な英語と挿絵だけの本。よくわからないまま受け取ったのだった。それがO・ヘンリーとわたしの初めての出会いだった。のちにその短編集が刑務所の中で服役中に自分の子供のために書かれたものだと知る。

英語は苦手だったけどその本は辞書がなくてもスラスラ読めたことを覚えている。冬休みが終わったあとどうしたのだったかはもうすっかり忘れてしまった。今だに先生がどういう意図であのときあの本をクラスのうちのわたしだけに手渡したのかは不明なままである。
思い出というには何のオチもない、おぼろげであやふやな話で申し訳ないけれどあれから25年ほども経っているのにクリスマスになると思い出し頭をひねるのである。

先生!出来の悪い生徒でごめんなさい!


クリスマスのランチはこれ。
イサキの塩焼き、ブダイとヒラメの刺し身、
カキ飯、カニのみそ汁、たっぷりのお漬け物。
しょうゆとポン酢はお好みで。