こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

包丁

わたしの一日は5本の包丁を研ぐことから始まる。それぞれ刃の長さや厚みや硬さや幅も違う5本。幅の狭いのは栽断用。まだ新しくて長いものは中底を漉くときによく使う。短くなってしまったものは中底を切り回しするときにちょうどいい。
それぞれ性格が違うけれどでもちゃんとそれぞれいい仕事をしてくれる。
刃の付け方は職人さんによって違う。丸く研ぐ人もいるし、斜めにまっすぐ研ぐ人もいる。こびとくは水平に近いまっすぐ。ちょっとだけ右上がり。これが一番、素直かなと思っているから。まっすぐ研ぐにはまず砥石を平らにしなくちゃいけない。だから毎日、砥石を研ぐところから始まるのだ。
それぞれ包丁をよく見ると○○製と文字が刻まれている。この左の包丁には“徳”の文字の上に傘がみえる。
これは「ヤマトク」の包丁である。ヤマトク(山徳)さんに包丁を買いにいったとき、最初別の包丁を出された。でも『ヤマトクの包丁が欲しいのですけど・・・』と言ったらこれを出してくれた。そして消費税分だけおまけしてくれた。このヤマトクの包丁はとても硬くてよく刃をこぼしてしまった。だけど上手く研ぐとこれが一番切れる。硬いからあまり好きではなくて使う頻度が少なくて刃がなかなか短くならないなって思っていたけど新しいものと比べると随分短くなってきている。

靴つくりのおもしろさのひとつは使う道具のおもしろさにあると思う。工程が多い分、様々な道具を使う。それに魅せられる人がいかに多いか・・・。

さて、今日も砥石を研ぐところから始めることにします。