こびとく日誌

クツをつくりながら考えたこと。晴耕雨読な日々のこと。

訃報

シューズデザイナーの高田喜佐さんが亡くなった。
病気療養中ということは人づてにきいてはいたのだけどまさかこんなことになるとは思ってもいなかったのでとてもショックを受けています。
わたしに限らず、靴を志すみんなの憧れの女性だったキサさん。
初めてお目にかかったのは94年の秋だった。初めての靴展を開催しようとしていたわたしにギャラリーのオーナーさんが『芸能人でも有名人でもだれでもいいから憧れている人にぜひDMを送りなさい』とアドバイスしてくれた。そしてわたしは全く面識がないにもかかわらずキサさんにご案内のハガキを出したのだった。もちろん観にきてもらえるなどとは思っていなかった。だって雲の上の人だと思っていたから。
けれどもその憧れの人がやってきてくださったのだ。そして何より嬉しい事に書きためていたクツクツ通信を気に入ってくださり、バックナンバー全てをじっくり読みたいとおっしゃってくださったのだ。以来10年以上、今までずっとクツクツ通信の愛読者となってくださった。
そしてご自身の本が出版されるたびにサイン入りで贈ってくださった。どんなにかお忙しい毎日を過ごされているに違いないのにいつも直筆でメッセージを添えてくださった。
クツクツ通信が一冊の本になったときに進呈させていただいたら、「ずっととっておいたクツクツが一冊にまとまってうれしい」とお礼状が届いた。どこまでも優しい心遣いの方だった。 一度遊びにいらっしゃいというお言葉に甘えて、ずうずうしくオフィスにお邪魔したことがあった。そのときも急な訪問にもかかわらず暖かく迎えてくださった。
いただいたお手紙の最後に追伸として書かれていた『ヒールの靴はムツ美さんは作らなくていいと思います』という言葉はいつまでも忘れないひとこと。何の展望もなくてまるで暗闇の中で孤独に靴つくりを続けていたようなわたしの前を明るく照らしてくれた灯台のような存在だった。直接お目にかかる機会は少なくて本当にささやかな交流ではあったけれどわたしにとっては大きな存在の方だった。

心よりご冥福をお祈りします。

わたしが手ぬぐいにはまったきっかけは
キサさんにいただいたこの手ぬぐいなのです
そしてこれが昨日買った加賀野菜柄